「引きこもりの家族の様子がおかしい」「被害妄想なのか事実なのかはっきりしない」「家族だけでは対応に限界を感じている」など、不安を抱えているご家族は少なくありません。
今回の記事では、大人になって引きこもり状態になり精神的に不安定になっているご家族へのサポートとして、探偵ができることをお伝えいたします。
執筆/監修者:山内 和也2024年2月9日
探偵調査歴20年。国内外の潜入調査、信用に関する問題、迷惑行為、企業や個人生活での男女間のトラブルなど、多岐にわたる問題を解決してきました。豊富な経験と実績を基に、ウェブサイトの内容監修や執筆も行っています。
目次
1- 事例「長野立てこもり事件」引きこもり家族が引き起こした悲劇
引きこもりがちだった容疑者による事件の概要は以下のとおりです。
長野県中野市で警察官ら4人が猟銃で撃たれるなどして犠牲になった事件で、県警に殺人の疑いで逮捕された青木政憲容疑者(31)は、立てこもった自宅に市議会議長の父、正道さん(57)や母ら家族と暮らしていたとみられる。
父が立ち上げた事業に関わっていたとされるが、近隣住民は最近の様子について「家にこもりがちだった」とし、人物の印象を「おとなしい」と口をそろえた。
登記などによると、正道さんは平成24年に地元で農業支援の会社を立ち上げ、令和元年に長野県軽井沢町でジェラート販売を開店。青木容疑者はジェラート店のほか、原材料となる果物を栽培する農園の運営にも携わっていたとされる。
軽トラックに乗り、農作業をする姿もみられたが、正道さんの知人は「農園の責任者に名義を貸しているだけで、仕事はしていなかった。自宅にひきこもり状態だった」と明かす。
自宅周辺で顔を合わせても、あいさつを交わすことはなかったという。
引用元:NHK 長野4人殺害「悪口言われたと思い殺した」
2- 引きこもりの原因
引きこもりの原因は個人によって異なる場合もあります。
社会的な問題、家族関係の問題、トラウマ、身体的な疾患など、さまざまな要因が引きこもりに関与する可能性があります。
以下に主に4つの要因を取り上げます。
心理的な要因
心理的な問題や精神疾患、社会不安、うつ病、不安障害などが引きこもりの原因となることがあります。
自己価値感の低下や自信の欠如、対人関係への恐怖、社会的なプレッシャーへの対処困難などが引きこもりを促す要因となることがあります。
社会的な要因
社会的な孤立や孤独感、人間関係の困難、いじめ、仲間外れ、経済的な困難などが引きこもりの原因になることがあります。
社会的な環境での受け入れや理解の欠如、人間関係のトラブル、社会への適応の困難さなどが引きこもりを引き起こす要因となることがあります。
家庭環境の要因
家族関係の問題、家庭内のストレスやトラウマ、親からの過保護などが引きこもりの原因となることがあります。
家族間の不和、家庭内での暴力や虐待、家庭環境の不安定さが引きこもりを促す要因となることがあります。
個人的な要因
個人的な特性や個性によっても引きこもりの原因が異なることがあります。
内向的な性格、自己肯定感の低さ、社会的なスキルや自己効力感の不足、目標や意義の欠如などが引きこもりを促す要因となることがあります。
3- 精神疾患がもたらす二次被害
家族の精神疾患がもたらす二次被害の事例は、以下のようなものが考えられます。
肉体的な被害
精神疾患を抱える家族の暴力や暴言により、他の家族メンバーが身体的な暴力や虐待を受けることがあります。
例えば、統合失調症を抱える家族が発作的な暴力行為を行い、他の家族メンバーがけがをする場合があります。
心理的な被害
精神疾患を抱える家族の行動や言動により、他の家族メンバーが心理的な苦痛を経験することがあります。
例えば、うつ病を抱える家族が抑うつ的な態度や無関心な態度を示し、他の家族メンバーが孤立感や無力感を感じる場合があります。
経済的な被害
精神疾患を抱える家族が就労や経済的な責任を果たせない場合、他の家族メンバーが経済的な負担を強いられることがあります。
例えば、双極性障害を抱える家族が安定した雇用を維持できず、他の家族メンバーが家計を支える責任を負うことになる場合があります。
社会的な被害
精神疾患を抱える家族の問題行動や社会的な不適応が、他の家族メンバーの関係や社会的な交流に悪影響を与えることがあります。
例えば、アルコール依存症を抱える家族が家族の外出や社会的なイベントに参加できず、他の家族メンバーが孤立感や社会的な制約を経験する場合があります。
4- 相談事例
「息子が訴える盗聴は事実か妄想か」
ご依頼者: | 女性 |
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ご依頼内容: | 息子の部屋の盗聴器確認調査 |
ご依頼理由: | 家に引きこもりがちの30代の息子がある日突然「盗聴器が仕掛けられている」と言い出し、外出時も「ストーカーに後をつけられている」「ほのめかしを受けている」などと、訴えがエスカレートしていきました。息子の被害妄想ではないかと思いますが、念のため調査をしてほしいです。 |
調査レポート: | 実際に何度も嫌がらせ調査をした経験者でも、「本当の被害者か」「被害妄想か」は1日では判断が難しいのは事実です。今回のケースでは、盗聴器確認調査、ご依頼者の息子さんの身辺調査や近隣住民への聞き込み調査など徹底的に調査を行ないました。結果、盗聴器は無く、つきまといなどの事実もありませんでした。調査結果をご依頼者と息子さんに伝えました。調査結果を聞いても不安が続くようでしたので、「妄想性障害(被害妄想)」とも呼ばれる被害型の精神疾患の可能性も含めて、専門のサポート機関をご家族にご紹介させていただき終了となりました。 |
5- 家族ができること
聞き役に徹する
家族が盗聴被害を訴え不安で苦しんでいる場合には、それが事実か被害妄想かにかかわらず、まず心を開き、積極的に聞くことが重要です。
当事者にとっては、不安や心配を受け止めてくれる理解ある存在が家族であることは大きな支えとなるからです。
家族は自分の意見や判断を押し付けるのではなく、傾聴し、当事者の感じる不安や恐怖を受け止め、共感することを意識してください。
家族のサポートが回復プロセスにおいて重要な要素となります。
民間のサポート機関に相談する
精神疾患を発症する過程には「理由」があります。
このような被害妄想などの精神疾患を発症する人の多くが、成長過程で何らかのPTSD(心的外傷後ストレス障害=「トラウマ」とも呼ばれます)を原因としたフラッシュバックや虐待を経験しています。
また、後天的な原因として、うつ病、アルコール依存症・パニック障害などの精神疾患の原因となるSAD(社会不安障害)、そして、幻覚・妄想などの陽性症状と自閉症などの陰性症状が見られる統合失調症などがあります。
現在では、治療法の進歩により「治せる病気」になっています。
精神疾患で病院に行くというと、「隔離病棟」や「身体拘束」を想像する人も多いでしょう。
しかしながら、今や、精神疾患の治療現場においては飛躍的な改善がみられ、投薬やカウンセリング、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の向上などの治療法が確立し、そのハードルも低くなってきています。
国のサポート機関に相談する
病院に連れていくのが難しい場合、各自治体が設置する精神保健福祉窓口に相談するのもひとつの手立てです。
社会的支援を受けることで精神疾患にかかっても、十分に社会生活を行なうことが可能に時代になっています。そのためには症状の早期発見や治療介入が重要となります。
政府も、自殺問題をはじめとしたメンタルヘルス対策には本腰を入れており、以下のような窓口を用意しています。
やってはいけないこと
無理やり病院へ連れて行くことはしない
信頼関係の崩壊につながる可能性があります。
精神疾患による被害妄想の場合、ご依頼者本人に病気の自覚がなく、ましてや、精神病にかかっているなどと自ら認めたくはないため、説得は困難を極めます。
それでもやはり家族のサポートは不可欠
精神疾患の可能性が高い場合、放置すれば、自殺を含めた自傷行為のみならず、最悪の場合、他人への攻撃、そして逮捕の可能性まで出てきます。
時間の猶予も限られた中で、治療の道へいざなうためには、家族の存在が不可欠です。
本人に精神的な病気に罹患している意識がない上、メンタルクリニックや精神病院、もしくは自治体の精神保健福祉センターに連れていくには、人権の観点から「家族の同意」が必要だからです。
それでも、ご自身やご家族だけでは解決が難しく、トラブルを起こしそうなときは、精神疾患の可能性が高いご依頼者を、医療につなげる専門部署を用意しているファミリー調査事務所にご相談ください。
6- 探偵ができること
引きこもりや被害妄想は、個人や家族にとって非常にデリケートで複雑な問題です。
これらの問題に対して探偵社ができることは、直接的な解決策を提供するよりも、背後にある原因や状況を明らかにし、支援することが主になります。
以下は、引きこもりや被害妄想に関連して探偵が行える活動の例です。
背景調査
- 生活状況の把握:引きこもりの原因を理解するため、本人の生活状況や日常の行動パターンを調査します。
- 関係者との関係調査:家族、友人、近隣住民との関係性や、その変化を調査し、引きこもりに至った背景を探ります。
被害妄想の実態確認
- 実際の被害状況の確認:被害妄想がある場合、実際に被害が存在するのか、それとも妄想に基づくものなのかを確認します。
- 監視・追跡調査:妄想の対象とされる人物や団体について、実際に追跡や監視を行い、本人の主張に真実味があるかを調査します。
安全確保
- 監視からの保護:被害妄想に基づく実際のリスクがある場合、本人や家族の安全を守るための措置を講じます。
- 専門家への橋渡し:調査結果に基づき、心理カウンセラーや医療機関への連絡をサポートし、適切な対応を促します。
探偵社が提供できるサービスは、問題の解決に直接的な手段ではなく、専門家や支援機関への橋渡しや、問題の原因を明らかにすることで、より適切な対応を促すことにあります。
家族や本人が抱える問題に対して、より良い理解と対応策を見つけるための一歩となるでしょう。
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