「空き地に雑草が侵入しており、土地の所有者に連絡を取りたい」
「土地を相続したけれど、所有権が誰にあるのかわからない」
このような場合、土地所有者調査を行う必要があります。
しかし、土地所有者調査の手順がわからず、お困りの方もいらっしゃるでしょう。
そこで、この記事では、土地所有者の調査手順や法的対処法などをご紹介します。
記事を読むことで、土地所有者調査の手順を把握でき、円滑な問題解決が実現します
土地所有者調査が必要になる主な場面
土地所有者調査は、以下4つの場面で必要になります。
・隣地との境界確定や工事の承諾が必要な場面
・相続した土地の権利関係を確認したい場面
・管理不全の土地による被害への対応が必要な場面
国土交通省の調査によれば、全国に約410万ヘクタールの所有者不明土地が存在しており、多くの人が所有者不明土地の問題に直面しています。(※1)
土地の購入や売却を検討している場面
土地の購入や売却を検討している場面では、土地所有者調査による正確な所有者の特定が必要です。
なぜなら、取引相手を正確に把握しなければ、安全な売買契約を締結できないからです。
所有者情報に誤りがあると、のちのち権利関係のトラブルに発展するリスクがあります。
地面師と呼ばれる不動産取引詐欺も存在するため、正確な所有者確認は安全な取引の基本です。
また、一つの土地を複数人が共同で所有している共有地の場合は、すべての共有者を特定し、全員から同意を得る必要があります。
土地所有者調査を怠ると、売買契約後に本当の所有者が現れて取引が無効になったり、共有者の一部が反対して取引が不成立になったりするリスクがあります。
土地の売買を検討している場面では、土地所有者調査を行い正確な所有者情報を確認しましょう。
隣地との境界確定や工事の承諾が必要な場面
自分の土地に隣接する土地との境界を確定する場面や、境界付近で工事を行う場面では、土地所有者調査による隣地所有者の特定が不可欠です。
なぜなら、境界確定には隣地所有者の立会いや合意が必要であり、法務局での境界確認手続きにおいても所有者の署名・押印が求められるからです。
土地の境界が不明確なまま工事を進めると、大きなトラブルに発展するリスクもあります。
例えば、隣地の境界から2メートル未満の距離で掘削工事を行う場合は、隣地所有者の承諾が必要です。(※2)
住宅の基礎工事のために深く掘削する場合も、事前に隣地所有者への説明と承諾が必要です。
土地所有者調査を怠ると、工事の着工が遅れたり、工事の中止を余儀なくされたりします。
境界に関する紛争は長期化しやすく、解決に多大な時間とコストがかかるため、事前の土地所有者調査は、将来的なトラブル防止の投資と言えるでしょう。
相続した土地の権利関係を確認したい場面
相続した土地の権利関係を確認する過程では、さまざまな場面で土地所有者調査が必要となります。
特に、相続発生時に不動産の登記名義人が被相続人ではなく、一世代前のままであるケースが多く見られます。
土地所有者調査が必要となる主な状況は、以下のとおりです。
・相続した土地の境界が不明確で、隣接地の所有者を特定する必要がある場合
・遺産分割協議を行う際に、被相続人が所有していたすべての不動産を把握する必要がある場合など
土地の登記名義が祖父のままである場合、法的には祖父から父、父から現在の相続人へと順に相続されるべき権利関係が登記上反映されていないことを意味します。
このような状況で、土地を売却するためには、誰が所有者であるか確定する必要があります。
土地所有者調査は、相続した土地の権利関係を確認するうえで欠かせないプロセスです。
適切な土地所有者調査を行うことで、相続登記をスムーズに進められます。
これにより、将来的な土地の利用や売却、相続税の計算などが円滑に行えます。
管理不全の土地による被害への対応が必要な場面
管理不全の土地による被害への対応が必要な場面では、土地所有者調査が不可欠です。
土地所有者調査は管理不全の土地による被害解決の第一歩となり、適切な対応策を講じるための重要な情報を提供します。
土地所有者調査が必要になる主な場面は、以下のとおりです。
・空き家の外壁が剥がれ落ち、近隣住民や通行人の安全を脅かしている場合
・不法投棄により空き地から悪臭が発生し、周辺の衛生状態が悪化している場合
これらの問題に対応するためには、土地所有者調査を行い所有者を特定して、適切な管理を求める必要があります。
土地所有者調査の方法には、不動産登記簿の確認や固定資産税課税情報の調査などがありますが、それらを試みても所有者が不明または連絡が取れない場合は問題解決が困難になります。
そのような場合に備えて、2023年4月に土地・建物に特化した財産管理制度が施行されました。
この制度では、以下の手順で管理不全の問題に対応します。
2.所有者との連絡が困難であることを確認する
3.裁判所に申立てを行う
4.裁判所が管理人を選任する
5.選任された管理人が所有者に代わり土地を管理する
(※3)
土地所有者調査は、行政指導や法的措置の根拠となる情報を入手できるだけではなく、財産管理制度利用の正当性を証明するうえでも重要な役割を果たします。
※参考:国土交通省|所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応(※1)
e-GOV法令検索|民法第二百三十七条(※2)
政府広報オンライン|相続登記が義務化!所有者不明土地を解消する不動産・相続の新ルールとは?(※3)
土地所有者調査の基本的な流れ4ステップ
土地所有者調査の流れは、以下4つのステップで構成されています。
- 調査対象の土地の地番を特定する
- 登記情報から所有権登記名義人を確認する
- 住民票や戸籍の付票で現住所・生存を確認する
- 現地調査や聞き取りで補足情報を集める
ステップを把握することで、調査の全体像が明確になり効率的に作業を進められるでしょう。
ステップ1:調査対象の土地の地番を特定する
土地所有者調査の第一歩は、調査対象となる土地の地番を特定することです。
地番は土地を特定する固有の番号であり、登記情報を取得する際に不可欠な情報です。
以下3つの方法で、地番を特定できます。
方法 | 詳細 |
公図の閲覧 |
|
法務局への電話照会 |
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法務局の地図データ利用 |
|
ただし、必要以上に情報収集すると、土地所有者のプライバシーを侵害する恐れがあるため、最小限の情報のみ収集してください。
ステップ2:登記情報から所有権登記名義人を確認する
地番を特定したら、登記情報から所有権登記名義人を確認します。
所有権登記名義人を確認する方法は、以下のとおりです。
方法 | 詳細 |
不動産登記簿謄本を取得する |
|
登記情報提供サービスを利用する |
|
これらの方法を活用することで、土地の所有権登記名義人の氏名と住所を確認できます。
なお、不動産登記簿謄本は公的な証明書として使用できますが、登記情報提供サービスで得た情報には証明力がありません。
そのため、土地所有者調査で所有権登記名義人の確認のみが目的である場合は、迅速かつ低コストな登記情報提供サービスの利用が適していますが、公的な証明が必要な場合は不動産登記簿謄本の取得がおすすめです。
ステップ3:住民票や戸籍の付票で現住所・生存を確認する
土地所有者調査の第3ステップでは、登記情報で把握した所有権登記名義人の情報をもとに、住民票や戸籍の付票で現在の住所や生存状況を確認します。
住民票の写しや戸籍の付票は、所有権登記名義人の住所地の市区町村に請求すれば取得できます。
請求の際は、以下の書類が必要です。
・利害関係を証明する書類(登記事項証明書や契約書の写しなど)
・請求書(市区町村所定の様式)
(※5)
住民票や戸籍の付票から、所有権登記名義人の現在の住所や生存状況、転出や転籍の有無を確認できます。
これらの情報は土地所有者調査において、所有者と連絡を取るための重要な手がかりとなります。
ステップ4:現地調査や聞き取りで補足情報を集める
土地所有者調査の最終手段として、公的書類による調査だけでは十分な情報が得られない場合、現地調査や聞き取り調査を実施します。
このステップは、土地所有者調査の精度を高める重要なプロセスです。
現地調査では、以下の点を確認します。
・周辺環境(道路状況や近隣の土地利用など)
・境界標の有無や位置
現地調査を行う際は、事前に土地の所有者や占有者の許可を得ましょう。
なお、国土交通省によると、聞き取り調査は以下の方々から情報収集することが推奨されています。
・近隣住民
・集落代表者
・所有権登記名義人の親族
(※6)
土地所有者調査は、以上4つのステップを踏むことで効率的に進められます。
ただし、各ステップにおいて個人情報の取扱いには十分な配慮が必要です。
必要に応じて、土地家屋調査士や司法書士などの専門家に相談してください。
※参考:千葉市|土地の公図を閲覧またはコピーしたいのですが。(※1)
法務省民事局|登記所備付地図データのG空間情報センターを介した一般公開について(※2)
法務省|登記手数料について(※3)
法務省|登記情報提供サービスの利用料金等一覧(※4)
大阪市|住民票の写しの交付請求(除票含む)・戸籍の附票の写しの交付請求(※5)
国土交通省|所有者の所在の把握が難しい土地に関する探索・利活用のためのガイドライン(※6)
所有者不明土地の調査と法的対処法
所有者不明土地の調査と法的対処法には、登記名義人の状況に応じてさまざまな方法があります。
状況に応じた方法を把握することで、適切な対応が可能になるでしょう。
登記名義人が行方不明の場合
登記名義人が行方不明の場合、土地の管理や処分が困難になります。
このような状況では、住民票や戸籍の付票などの公的書類を取得し名義人の現住所を確認します。
公的書類を取得しても名義人の所在が判明しない場合は、以下の方法で調査を進めるのがベストです。
方法 | 内容 |
近隣住民や親族への聞き取り調査 | 所有権名義人等の親族や近隣住民、集落代表者などに聞き取り調査を行う |
失踪宣言の手続き | 行方不明者の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行う |
不在者財産管理人の選任の申立て |
(※1)
特に、不在者財産管理人の選任は重要です。
なぜなら、裁判所が選任した管理人が土地の管理や売却などの法律行為を行えるからです。(※2)
実際、自治体が不在者財産管理人制度を活用し、空き家問題に対処した事例もあります。
不在者財産管理人の選任の申立てにより、所有者が不在でも土地の適切な管理や活用が可能になります。
登記名義人が死亡している場合
登記名義人が死亡している場合、相続人の特定と相続登記が必要です。
相続人の特定や相続登記などの手続きは、複雑に感じる方も多いでしょう。
しかし、以下の手順どおりに行えばスムーズに進められます。
手順 | 内容 |
1:法定相続人の特定 | 戸籍謄本を取得し、相続人を確定する |
2:遺産分割協議 | 相続人全員の同意を得て、誰がどの財産を相続するのか決定する |
3:相続登記申請 | 相続登記申請書を作成し、必要書類(戸籍謄本や遺産分割協議書など)を添付して法務局に申請する |
(※3)
相続登記は相続開始を知った日から3年以内に行う必要があります。
これは、2024年4月から施行された相続登記義務化によるものです。
期限内に登記しない場合、10万円以下の過料が科される可能性もあります。(※4)
相続人が複数いる場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。
専門家に相談することで、スムーズに進められます。
法人名義の土地で会社が存在しない場合
法人名義の土地で会社が存在しない場合、土地所有者調査は複雑になります。
なぜなら、法人が解散しているか決算結了しているか、あるいは休眠状態にあるかによって対応方法が異なるからです。
以下の表に、法人名義の土地で会社が存在しない場合の調査と対処法の手順をまとめました。
手順 | 内容 |
1:法人登記情報の確認 |
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2:本店所在地での現地調査(法人が解散していない場合) |
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3:過去の関係者への調査(本店所在地で情報が得られない場合) |
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4:財産管理人の選任(手順3でも所有者が特定できない場合) |
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(※5)
法人名義の土地調査は複雑であるため、弁護士・司法書士・不動産鑑定士などの専門家に相談するのが得策です。
専門家に相談すれば、法的手続きや調査方法に関して的確なアドバイスとサポートを提供してもらえます。
共有者が不明な場合
土地の共有者が不明な場合は、以下の手順で調査を進めます。
手順 | 内容 | |||
1:共有者調査 | 1:公的書類の取得 |
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2:親族関係の調査 |
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3:現地での聞き取り調査(※6) |
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2:法的対処法 | 1:共有物分割請求(※7) |
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2:不明共有者の持分取得(※8) |
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3:管理に関する裁判(※9) |
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|||
3:供託手続き(※10) |
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土地の共有者を特定すれば、土地の有効活用や管理の円滑化、相続問題の解決などが可能になります。
※参考:国土交通省|所有者の所在の把握が難しい土地に関する探索・利活用のためのガイドライン(※1・5・6)
e-GOV法令検索|民法第二十五条(※2)
法務省民事局|登記申請手続きのご案内(※3)
法務省|相続登記の申請義務化特設ページ(※4)共有制度の見直し(3)(※7)民法・不動産登記法(所有者不明土地 関係)の改正等に関する要網案(※8)民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明(※9)供託手続き(※10)
土地所有者調査で注意すべきポイントと対処法
土地所有者調査は、不動産取引や相続問題解決の重要なステップです。
しかし、土地所有者調査には、さまざまな障害が潜んでいます。
この章では、土地所有者調査を行う際に注意すべきポイントと対処法を解説します。
登記名義人と実際の所有者が異なる場合の対処法
土地所有者調査で最初に直面するのが、登記名義人と実際の所有者が異なる問題です。
この問題は、相続登記が行われていなかったり名義変更が適切に行われていなかったりすることで発生します。
登記名義人と実際の所有者が異なる場合は、以下の手順で対処しましょう。
対処法 |
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1:登記簿謄本を取得する | 最寄りの法務局で取得する(オンライン申請も可能) |
2:登記名義人の戸籍謄本や除籍謄本を取得する | 市区町村役場で取得する |
3:相続関係を調査し、現在の所有者を特定する | 戸籍をたどって相続人を特定する |
土地所有者調査の初期段階で適切な手続きを行えば、のちのちのトラブルを防げます。
複数世代にわたる相続で調査が難しくなる場合の対処法
土地所有者調査を進めていくと、複数世代にわたる相続が発生している場面に遭遇するケースもあります。
例えば、曽祖父の代から相続登記が行われていない場合は相続人が十数人におよび、全員の所在を確認するのが困難になります。
複数世代にわたる相続により土地所有者調査が困難な場合は、以下の手順で対処しましょう。
対処法 |
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相続人が複数いる場合、作業量が膨大になるうえに法的知識も必要になります。
そのため、弁護士や司法書士などの専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
土地所有者の調査は専門家に依頼しよう
土地所有者調査を行い所有者を特定することで、土地取引の安全性を向上できたり境界紛争を防止できたりします。
ただし、自力での調査には限界があるため、専門家のサポートが必要になるケースも少なくありません。
ファミリー調査事務所では、土地所有者調査をはじめ、不動産トラブルに特化した幅広いサービスを提供しています。
探偵ならではの高度な調査技術と機密保持体制により、迅速かつ確実な問題解決を実現します。
土地所有者調査でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
24時間365日、受け付けております。

執筆者:米良2025年3月26日
長年の情報収集経験を有し、英語での情報分析も得意とする。豊富な海外調査実績をもとに、国内外の問題を独自の視点で解説します。