競合他社について調べて、自社をより有利にしていきたいと経営者層なら常に考えていることでしょう。
しかし、やり方を間違えると「産業スパイ」となり、実行した人だけでなく指示をした企業にも罰則が科せられます。
企業に覆面調査をかけたい場合は、探偵への依頼がおすすめです。
この記事では産業スパイを自社で行なうリスクと、探偵に依頼すべき理由<をご紹介します。
執筆/監修者:山内 和也
2023年2月24日
目次
産業スパイとは?
産業スパイとは、企業が競合他社の持つ機密情報を入手するために送り込む人、ならびにその行為自体を指す言葉です。
産業スパイによってもたらされるメリット・デメリットには何があるのか、あらかじめ知っておきましょう。
産業スパイを行なうメリット
産業スパイによって競合他社の機密情報を得ることで、以下のような利点が考えられます。
- 競合他社の内情を把握できる
- 競合他社に先手を取れる施策が打てる
- 競合を上回る商品やサービスが作れる
他社の現状だけでなく今後の計画までを知れば、競合他社に対する優位性を獲得できるでしょう。
産業スパイを行なうデメリット
産業スパイを行なうことは、デメリットも抱えています。
場合によっては、自社の信用に大きく傷がつくリスクも。
- 自社の信用問題になる
- 民事と刑事両方で罰則に問われる
効果は大きい反面、リスクもかなり大きいので慎重な検討が求められます。
産業スパイの事例
過去にも、産業スパイの情報取得によって起きた問題がニュースとなっています。
時には世間を騒がせるような事態になるため、どのような前例があるのか把握しておきましょう。
IBM産業スパイ事件
米FBIは6月22日、米IBMが開発したコンピューターと周辺情報を産業スパイしたとして、日立や三菱電機などの6人を逮捕し、12人に逮捕状を出した。米司法長官によれば、容疑者は新型コンピューターに関する情報を多額の現金を渡して、入手した。
アメリカのニュース番組では司法省の発表として、日立の社員が日本円で1億5000万円、三菱電機の社員が650万円を渡していたとしている。
国際的産業スパイとしては最大級のこの事件では、IBM社員に扮したFBIが現金を受け取るというおとり捜査が行われた。
引用元:IBM 産業スパイ事件 | NHK放送史(動画・記事)
ベネッセ個人情報漏えい事件
2014年6月27日、株式会社ベネッセコーポレーションは、お客様からの問い合わせによりお客様の個人情報が社外に漏えいしている可能性を認識
(中略)
調査により、同年7月7日、弊社からの漏えい情報であることが確認された
(中略)
社内調査の結果、弊社の管理するデータベースから個人情報が社外に不正に持ち出されていた事実が存在する可能性が高いことが判明したため、警察に対する相談を開始し、同年7月15日には、警視庁に対して、本件お客様情報漏えい事実についての刑事告訴を行いました。
本件刑事告訴を受け、同月17日、警視庁は、不正競争防止法違反の容疑で、弊社のシステム開発・運用を行っているグループ会社・株式会社シンフォームの業務委託先元社員を逮捕しました。
引用元:事故の概要 | お客様本部について | ベネッセお客様本部
かっぱ寿司事件
回転すしチェーン「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトは10月3日、田邊公己(たなべ・こうき)社長が辞任すると発表した。
後任には同社取締役の山角豪(やまかど・つよし)氏が同日付で就任した。
田邊社長は競合の「はま寿司」の情報を不正に取得したとして、9月30日に不正競争防止法違反の疑いで逮捕され、10月3日に書類送検されていた。
引用元:「かっぱ寿司」社長、「はま寿司」情報不正取得で逮捕→辞任 競合の現役社長が兼務で後任に、理由は? – ITmedia ビジネスオンライン
産業スパイにかけられる罰則
産業スパイを行なった場合、どのような罰則が科せられるのでしょうか。
実行した人だけでなく、企業からの指示があった場合には指示をした企業にも罰則があります。
産業スパイの罰則規定を確認して、リスクを把握しておきましょう。
民事上の罰則
産業スパイは、下記の民事上の責任を問われる場合があります。
- 債務不履行
- 不法行為責任
債務不履行
もし対象にしていた競合他社の就業規則に機密保持が定められていた場合、機密を外部に漏らした場合は「債務不履行」となります。
就業規則を破ったことになりますので、懲戒処分だけでなく民法415条1項に基づき損害賠償を請求される可能性が。
不法行為責任
産業スパイを故意に行なって会社に損害を与えた場合は、民法709条の「不法行為責任」に問われます。
こちらも損害賠償責任を負うため、賠償金の支払いが必要になります。
刑事上の罰則
産業スパイを行なうと、刑法に基づいた処罰を科される場合もあるため注意です。
- 窃盗罪
- 業務上横領罪
- 不正競争防止法違反
窃盗罪
企業のデータや機密情報を持ち出した場合、窃盗罪が適用されるケースがあります。
窃盗罪の適用には、窃盗されたものが財産的価値のある「財物」として認定されるかが焦点です。
この「財物」は有体物のみに認定されるため、データは該当しません。
つまりデータそのものではなく、盗んだデータを入れたUSBメモリや端末が確認された場合に窃盗罪の対象となります。
また、データを持ち出す行為が不正アクセス禁止法に抵触する可能性も考えられるでしょう。
窃盗罪では10年以下の懲役または50万円以下の罰金、不正アクセス禁止法違反は3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。
業務上横領罪
業務上横領罪は、仕事上の理由で所有している会社の持ち物を横領した際に科せられる刑罰です。
こちらも横領したものが「財物」であるかが適用の判断を分けます。
もし適用された場合、10年以下の懲役が科せられます。
不正競争防止法違反
不正競争防止法は、企業の公正な競争を実現するために他社の利益を妨害する行為を禁止する法律です。
産業スパイは、不正競争防止法第2条6項に規定された「営業秘密」を持ち出したかが問われます。
「営業秘密」は、以下の3つの要素を満たす情報が当てはまります。
- 非公知性…公然と知られていない情報
- 秘密管理性…秘密として管理されている情報
- 有用性…事業において有用な技術上または営業上の情報
逆に言えば、上記3要素を1つでも満たさなければ不正競争防止法違反にはなりません。
不正競争防止法違反は、最大で10年以下の懲役または3000万円以下の罰金という重い罰則が科されます。
指示した企業側にも罰則が
産業スパイの実行犯だけでなく、産業スパイを指示をした企業にも罰則が科される場合があります。
不正競争防止法では、企業が産業スパイに関わっていた場合の罰則も第22条にて規定しています。
指示を出した企業には、最大10億円以下の罰金という重い処罰が。
産業スパイによる不正競争の影響は、それだけ重大だといえるでしょう。
探偵に企業の覆面調査を依頼するメリット
産業スパイを内製の人間や他社からの引き抜きで行なった場合、足がつきやすいデメリットが。
情報の獲得には、第三者の立場である探偵への依頼がおすすめです。
産業スパイを探偵に依頼するメリットをお伝えします。
守秘義務に則り依頼先を秘匿する
探偵には守秘義務があり、依頼者の情報を決して口外しません。
産業スパイを内製や他社の人材で行なうと、そのような義務はないため口外のリスクが。
しかし、探偵は契約を遵守するため、依頼者の情報が漏れることはありません。
第三者の立場から依頼先の特定を回避
探偵に覆面調査を依頼する企業は、探偵とは全く関係のない業種である場合が大半です。
依頼先企業との関連性を疑われないため、依頼先の特定を回避できます。
調査を行ないたいものの特定は避けたい企業は、探偵への依頼がおすすめです。
調査費用については、下記のリンクをご参考ください。