家電商品が家中にあり、スマートフォンや小型の電子デバイスが次々と普及している現代、電磁波過敏症を訴える人も増えています。
他方では「5Gの電波で新型コロナが拡散されている」「コロナワクチンにはマイクロチップが仕込まれ、5G通信で操作される」「5G通信網が人体に害を及ぼす・ガンを誘発する」などといった“5G陰謀論”が日本のみならず、欧米でも広がっており、これに便乗した“電磁波防護グッズ”が次々と登場し、衣服や帽子の他にも、スマホケースやシール、アクセサリー、サプリメント、ローションなども大手ECサイトで販売されています。
しかしながら、電磁波過敏症などといった症状と自然界、および日常生活における電磁波との関係は未解明な部分も多く、中には虚偽広告で米連邦取引委員会に訴えられたケースもあります。
日本で事業を展開しているEコマース事業社は、こうした科学的根拠のない商品が、堂々と売られている現実もあります。
執筆/監修者:山内 和也2023年12月15日
探偵調査歴20年。国内外の潜入調査、信用に関する問題、迷惑行為、企業や個人生活での男女間のトラブルなど、多岐にわたる問題を解決してきました。豊富な経験と実績を基に、ウェブサイトの内容監修や執筆も行っています。
目次
そもそも「電磁波」とは何か?
電磁波とは電気が流れるところに発生するエネルギー波のことであり、総務省のよると、3THz(テラヘルツ)以下の周波数で発せられる電磁波のことを電波と定義されています。
100kHz以下の低周波で強い電波を浴びると体内に電流が発生し、刺激を感じることから、低周波治療器にも応用されています。一方で、100kHz(キロヘルツ)以上の高周波で強い電波を浴びると体温が上昇するといわれています。
スマートフォンの電波はこの高周波に属しているため、強い電波を浴びると体温上昇などが起こることがありますが、この電波はそこまで強いものではなく、実際に体温上昇が感じ取れるほどの影響は出ていないと考えられています。
よって、電磁波による人体への影響を示す根拠がないという見解が一般的です。スマートフォンが電波を使っている以上、電磁波が出ていることは事実です。
ただし、これは5G回線に限った話ではなく、3G回線を使用したガラケーについても同じことなのです。
スマホの電磁波を浴び続けるとガンになる?
電磁波は電磁放射線であるため、この放射線を浴び続けることによるガンの発病との因果関係を指摘するレポートがあり、3000THz以上の超高周波だと電離作用が働いて発ガン性があるという指摘もあります。
しかし、総務省による「電波の生体影響に関する最新動向」というレポートでは、電磁波の健康影響について脳や中枢神経系への影響や発ガン性など、さまざまな角度で検証がされた結果、明らかに影響があるという立証はされていません。
日常生活の中では、スマートフォン以外にも、電子レンジ、IHヒーター、電気毛布、電気カーペット、こたつ、パソコン。ドライヤー、電気シェーバーなど電磁波を発している電子機器で溢れています。これらは、携帯電話が登場する前から日常生活で利用しているものです。
日常生活を送る上で、電磁波は切っても切り離せない関係であるため、接触を断つのはほぼ不可能に等しいといえます。
それが現在になって、突然、「電磁波防止グッズ」が世の中にあふれた背景には、スマートフォンの登場と通信の高速化によって、商売の観点から「有望なニッチ市場」として“商業ベース”に乗った証しといえるでしょう。
しかし残念なことに、新興市場であるがために、その商品ラインナップは玉石混交の状態であり、“インチキ商品”が販売されている状態が放置されているもの事実なのです。
「電磁波防止グッズ」の内幕
実際に効果があるものも
電磁波防止グッズが生まれたのは最近の話ではなく、アルミ製の帽子で電磁波から頭を守る帽子型のグッズは以前からありました。
また、電磁波シールドメッシュは、ナイロン糸に銀などの金属をコーティングした素材で、スマートフォンなどのマイクロ波と低周波の電場は遮断することが可能であり、実際に電磁波測定器で測定すると、その効果も確認できます。
布状なので用途に合わせてカスタマイズすることも可能です。電磁波シールドメッシュが人体のシールドに適しているのに対して、電磁波から機器をシールドする手段としては電磁波シールドスプレーというものも発売されています。
業務用の電磁波ノイズ対策(EMC対策)や静電気除去のために利用されることが多いようですが、スプレータイプなので個人でも多く利用されています。
ネットに溢れる“トンデモ商品”
一方で、Amazonや楽天といった大手ECサイトでは、「有害な5G電波から守ります」という商品が溢れています。
いずれも“5G陰謀論”に便乗した謳い文句で、“未知のものを恐れる”人間の心理に付け込んだものです。
原発事故による放射能汚染やコロナウィルスのパンデミックの際にも同じような悪徳業者が登場しましたが、全く同じ図式です。
前述したように「5G」とは、通信スピードや通信容量が発展したに過ぎず、その根本はガラゲーで使用する「3G」の発展形に過ぎません。
それを、あたかも新しいテクノロジーのように喧伝し、恐れるべき「未知の電磁波」に仕立て上げ、新たな詐欺商法が生まれているのです。
冷静に考えれば、首からぶら下げるだけのペンダントや、胃腸で消化されるだけのサプリメント、5G防止ローションなどで全身を守れるハズはないことなど、少しでも考えを巡らせれば理解できるように感じますが、「効果があった」というネット上のレビューを見る限り、単なる「スピリチュアル効果」か「プラセボ効果(偽薬効果)」と断じることができます。
また、違法なサプリメントなどは、却って健康被害を受ける可能性すらあります。
「電磁波過敏症」の人が考えるべきこと
根底には政府やWHOへの不信感も
「電磁波に大きな害はない」という国家機関からの発表や、世界保健機関(WHO)が「携帯基地局やワイヤレスネットワーク(Wi-Fi)からの高周波曝露レベルは非常に低く、高周波は距離とともに急速に消散するため人体の健康被害はない」と公表しても、電磁波過敏症に苦しむ人は聞く耳を持ちません。
例えば米国では、連邦通信委員会と米国食品医薬品局の両方が「高周波とガンの因果関係には十分な証拠がない」と公表したにもかかわらず、“逆張り”によって名を売ろうとする1人の医師が「電磁波や5Gは危険」と警鐘を鳴らしてしまうと、そこに説得力が生まれてしまいます。
もともと「政府やWHOは何か隠しているに違いない」という疑心暗鬼に、医師の“お墨付き”が付くことによって、自身の不安が確信に変化し、そこに付け込んだ詐欺業者が明らかにまがい物の商品を売り付ける隙が生まれてしまうのです。
残念ながら、こうした商品がAmazonや楽天といった大手ECサイトにはびこっているのです。
本物を「見極める目」が大切
政府や国家機関が、Amazonや楽天といった大手ECサイト、小売業者への規制、加えて、消費者保護に積極的に取り組まない限り、誤った情報から生まれた陰謀論による詐欺商法は放置され続け、それによって大手ECサイトが甘い汁を吸い続けることになります。
いずれ“5G陰謀論”は衰退しても、また新たな「健康への脅威」をでっち上げ、商売を続ける未来が容易に想像できます。こうした悪徳商法については、消費者庁のホームページで最新の悪徳商法を紹介しています。
特にネット通販トラブルの事例については、その手口を詳細に掲載していますので、こまめにチェックするといいでしょう。
トラブルの告発先
消費者庁では、注意喚起のみならず、商品やサービスなど消費生活全般に関する苦情など、消費者からの相談を専門の相談員が受け付け、公正な立場で処理にあたっています。
また、越境消費者センターでは、ネットを含む海外からの買い物でトラブルに遭った消費者からの相談を受け付けています。
そして、何よりも重要なことは、自身が一度冷静になり、お目当ての商品について「効果があるのか」を厳しい目で判断する力を持つこと他なりません。
- 消費者庁HP https://www.caa.go.jp/