今まで探偵社に調査を依頼した際、GPS調査を提案された人もおられるかと思います。
GPSを使えば、確かに特定人物の居場所の追跡も可能になるでしょう。
しかし、実は令和3年の法改正により、探偵がGPS調査を行なうことは違法となる可能性があります。
この記事では、GPS調査が違法となる背景についてご紹介します。
執筆者:波多野 里奈2024年4月20日
教育学をはじめ臨床心理学、行動心理学を学び、人が抱える悩みや問題に寄り添いサポートすることを得意とする。結婚や離婚に関する問題、素行調査に関する相談解決実績多数。英語の語学力を生かし海外探偵調査の相談窓口を担当。
目次
探偵のGPS調査は違法になった!
探偵によるGPS調査が違法であることは、まだまだ世間には浸透していません。
令和3年のストーカー規制法改正に伴って、探偵のGPS調査は違法となりました。
法律について理解しておくことで、余計なトラブルに巻き込まれずに済みます。
令和3年のストーカー規制法改正内容
令和3年のストーカー規制法改正では、ストーカー行為に該当するものとして下記が追加されました。
(参考:ストーカー規制法が改正されました!|警察庁Webサイト)
これまで規制されていなかった上記の行為も、ストーカー規制法の罰則が適用されることになります。
- ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 禁止命令等に違反してストーカー行為をした者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金
- 禁止命令等に違反した者は、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
(参考:ストーカー規制法 警視庁)
GPS機器によって無断で誰かを追跡する行為は違法だと理解しておきましょう。
GPS調査が規制された背景
GPS機器を使った位置情報の把握や追跡がストーカー規制法の対象になった背景には、令和2年における最高裁判決があります。
令和2年7月に、元交際相手の車にGPS機器を取り付けて位置情報を探索・取得する行為に対する裁判が最高裁で行なわれました。
この位置情報の探索・取得行為は、ストーカー規制法における「住居等の付近において見張り」をする行為には該当しないと判決が下りました。
つまり、これまではGPS機器による追跡を規制する法律がなかったということです。
この判決は当時の法律上は問題ないながらも、現状のストーカー被害の実情を法律でカバーできていないと判断され、令和3年の法改正に至りました。
探偵のGPS調査が違反する法律
探偵が行なうGPS調査は、さまざまな法律に違反する可能性があります。
それだけ、現在ではGPS調査がリスクを伴う調査方法になったともいえるでしょう。
GPS調査が違反する可能性のある法律について、理解を深めましょう。
器物損壊罪
もしGPS機器取り付けの際に、調査対象者の車や持ち物などを破損させたり傷つけたりした場合、器物損壊罪に該当します。
これは車に設置する場合だと車体やバンパー裏部分などに傷をつけることが想定されるでしょう。
また、持ち物に仕込む場合ではその持ち物をくり抜いたり、接着をはがす際の傷などがあれば器物損壊罪です。
違反すれば、下記の刑罰が科せられます。
3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料
プライバシーの侵害
GPS機器を用いて他人の現在地点を把握して、行動を追いかけることはプライバシーの侵害に該当します。
そもそもプライバシー権とは「私生活をみだりに後悔させないという法的保障ないし権利」のこと。
位置情報を把握して行動を追跡することは、人の私生活に立ち入る行為になります。
刑法上の罰則はありませんが、民事裁判による損害賠償請求の対象には該当します。
ストーカー規制法
上述の通り、令和3年の法改正によりGPS調査はストーカー規制法の取り締まり対象です。
今やGPSの発信機は手頃な価格で入手可能になっています。
つまり、以前よりもGPSのつきまとい行為への悪用が簡単になってきているとも言えるでしょう。
最新技術が発展することで、それを悪用する行為の取り締まり強化や法改正はどうしても必要になります。
迷惑防止条例
調査対象の40代男性の車に無断で衛星利用測位システム(GPS)装置を設置し、位置情報を取得したとして、大阪府警此花署は7日までに、府迷惑防止条例違反の疑いで、探偵事務所「アクア調査事務所」代表の若原弘輔容疑者(40)=大阪府摂津市=を逮捕した。署によると「追跡を楽にするためだった」と容疑を認めている。
昨年9月に男性から「自分の車の底にGPSが設置されていた」と相談があった。装置は黒色のプラスチック容器に入っており、磁石で取り付けられていた。
位置情報を無承諾で取得する行為は、昨年2月施行の改正府条例で禁止された。この容疑の摘発は府内初という。
探偵がGPS調査で得た情報は証拠になる?
もし探偵がGPS調査を行なったとしても、得た情報は証拠として使えるのでしょうか。
法律が変わったことで、探偵にとってもGPSというものの扱いは変わってきています。
違法な手段で得た証拠は無効
そもそも、違法な方法で入手した証拠は「違法収集証拠」といい、証拠能力が認められません。
例えば逮捕状なしでの逮捕や、拷問によって言わせた証言などがもし証拠収集の方法として認められた場合、今後の捜査時にもその違法行為がまかり通ってしまうことになります。
このような被害の拡大が懸念されるため、違法行為によって得た証拠は認められないのです。
もしお金をかけて依頼した調査で、得た情報が証拠にならない場合、それまで支払った費用が無駄になってしまうでしょう。
特商法の「不実の告示」に該当
もし探偵にGPS調査を依頼した結果、調査結果に証拠能力が失われた場合、結果的には調査しても何も得られなかったということになります。
また、GPS調査の説明時に違法性に関する説明を何もしていなかった場合、これは特定商取引法における「不実の告知の禁止」に該当します。
商品・サービスの重要事項説明時に事実と異なる嘘の説明をすることの禁止
もし不実の告知があると明らかになれば、後からその契約を取り消すことも可能です。
ただし、追認(契約を取り消さないと決めること)から1年、もしくは契約締結から5年以内でないと時効となり、取り消しはできません。
探偵のGPS調査で裁判判決は違法
札幌市の探偵業者によるGPS機器を使用した調査を道内の男女2人が違法だと訴えた裁判で旭川地方裁判所は「プライバシーを違法に侵害する行為」だと認める判決を言い渡しました。 この裁判は札幌市の探偵業者が、調査の対象にしていた道内の男女2人の乗用車にGPS機器を取り付けたのは「プライバシーを違法に侵害する行為」だとして男女2人が探偵業者に対しあわせて480万円の損害賠償を求めているものです。 22日の判決で旭川地方裁判所の上村善一郎裁判長は「位置情報や移動履歴は他者にみだりに開示されたくない個人情報と言える。2人が情報を把握されることを了承していたとは言えず原告らのプライバシーを違法に侵害する行為」だと述べました。 そのうえで「原告らはプライベートを侵害されて精神的苦痛を受けたと認められる」などとして札幌市の探偵業者に対しあわせて44万円を支払うよう命じる判決を言い渡しました。 判決について原告側の弁護士は「GPSが、のほうずに使用されている探偵業界に警鐘を鳴らす判決だ。GPSを無断で車両に取り付ける手法は、刑事事件においては最高裁で明確にプライバシー侵害であると判断されているが、探偵業者のGPS調査の違法性を認めた判決は全国で初めてではないか」と話していました。
鍵となるのは「GPS使用が探偵の正当な業務と認められるか」という点です。
探偵業に関する法律をまとめた「探偵業法」では、公安から認可を受けた探偵は下記の行為を合法的に行なえると定められています。
- 尾行
- 張り込み
- 聞き込み
上記の行為は全てストーカー規制法の取り締まり対象ですが、探偵には許されているのが現状です。
これに現在GPSの使用は含まれていませんが、もしかすると今回の裁判は探偵業法改正のきっかけになる可能性も。
しかし、現状探偵のGPS調査は違法という認識で間違いありません。
もし探偵からGPS調査を提案されたら?
探偵に調査を依頼した際に、もしGPS調査を行なうことを勧められた場合はどうすればいいのでしょうか。
依頼している反面、専門外のことにはなかなか口出しできないかもしれません。
しかし、探偵社側の狙いも把握しておけば対処もしやすいでしょう。
狙いはGPSを使用してのコストカット
なぜ探偵社はGPS調査をしたがるかと言うと、コストカットを狙っているからです。
もし人海戦術で人の行動を追う場合、調査員1名だけで対象者の行動全てを追うのはかなり骨が折れます。
行動を完全に把握するために人数をかけるのも有効ですが、その分人件費は増えてしまいます。
しかし、GPSを使って対象者の居場所が把握できるようにしておけば、尾行に人員を割く必要もありません。
今まで調査員数人で行なっていた調査を1人でできるようになれば、その分人件費が浮くため探偵社もコストをかけずに済みます。
そのため、尾行において探偵社はGPS調査をした方がコストがかからず得なのです。
なかには、調査員数人分の費用を依頼者に要求して、実際には1人だけ稼働させることで利益を上乗せしようとする探偵社も存在します。
依頼者が調査員の実情まで把握するのは難しいため、GPS調査を提案する探偵社は一律で断るようにするのがおすすめです。
GPSを依頼者に取り付けさせる探偵もいる
GPS設置が違法になのは、他人の持ち物にGPS発信機を無断で仕込むのがプライバシーの侵害になるためです。
ですが、夫婦・家族間であれば車に仕掛けても、共通の持ち物とみなされて合法になるケースが存在します。
それを利用して、浮気調査において依頼者に対象者の車や持ち物にGPS発信機設置を指示する探偵社もあります。
ですが合法になるかはケースバイケースなため、最悪の場合犯罪の片棒を担がされてしまうことも。
GPS調査が違法だという知識があれば、依頼者に発信機設置を任せようとする探偵社の異質さが際立つでしょう。
クーリングオフ期間ならキャンセル可能
もしGPS調査に同意してしまっても、特定商取引法で認められたクーリングオフ制度によって契約のキャンセル・返金が可能です。
契約の申し込み・締結をしても一定の期間内であれば無条件で契約の解除および申し込みの撤回ができる制度
探偵のクーリングオフ期間は8日間となっており、その期間内であれば何の制限もなく契約が撤回できます。
ただし、依頼者が自らの意思で探偵会社の事務所を訪れたり、探偵会社の従業員を契約目的で自宅に招いた場合に締結した契約はクーリングオフの対象外となります。
当探偵事務所のGPSの扱い
当探偵事務所は、昨今のGPS調査が抱える問題点を鑑みて、GPSを使った調査を行なっていません。
これは当探偵事務所からの提案だけでなく、依頼者からのGPS調査依頼もお断りするということでもあります。
また、もし他社でGPS調査を依頼してしまった場合における、適切なサポート対応も実施します。
「多額の料金を払ってるけどちゃんと調査してもらえるのか不安」という方は、お気軽に当探偵事務所にご相談ください。
相談受付は24時間365日行なっていますので、今お抱えのお悩みをお伝えいただければと思います。
ファミリー調査事務所 お問い合わせフォーム
ご連絡をいただいたら24時間以内に返信いたします。
お急ぎの方は、こちらから折り返しお電話するので、お名前・電話番号の記入のみでけっこうです。